暗闇で騒ぐアラームたちを、半分夢の中で止める。4時。よしよし。すると今度は、電話が鳴る。
「もしもし」
「おはよー。絶対に起こしてあげなきゃいけんと思って、3時55分に起きたよ」
すでに東京入りしている大きい人からのモーニングコールだった。寝転んだまま礼を言い、飛び起きる。
「まいたけちゃん、夢じゃないよ。シーに行けるんだよ!」
小さい人は、起き抜けからディズニーシーへMAXでたかぶっている。
「よーし、シーに、レッツーゴー!」
まずは無事に、東京に着こう。
今日から3泊4日の舞浜東京旅。2日間はシーに、3日目は、まだほやほやの赤ちゃんが暮らす友人宅へ。シー1日目は、なんと年輪を重ねた人々と一緒に行ける。「行ったことがないから行ってみたい」と言っていたねんりんずの夢も叶えられるし、我々の4年越しの思いも果たせる日だ。綿密に計画を立てて迎えた、今日。
6時半すぎには家を出るため、倍速で朝をこなす。後半、ちょっと怪しい空気になったけれど、何とか持ち直し、ゴミ出しへ。よしよし、いい感じ。そう思いながらポストを開けると、足音の騒音についての文書が入っていた。今までは掲示板に貼られていただけだったが、ついに、番号指しで、来たか。明確な部屋番号の記載はなかったものの、301号室の方々が管理人さんへ相談したのだろう。最近、ちょっとうるさいかな?とは思っていたけどさ、いざ紙になると、くる。「てぃのちゃん?下の階の人が、足音静かにしてだって」と、ややしょんぼり伝えると、「うん!」と、返事だけは満点だった。小さい人は、基本、明るい。
さて、小さい毛の家族の世話も3泊仕様にして、いざ。小さい人は、おめかしさせたリーナ・ベルをしっかり引き連れる。
予定通り、駅の新幹線口で年輪の人々と合流。先に東京で待っている大きい人に、4人の集合写真を撮って送る。
ねんりんずとは号車は違うが、デッキを挟んですぐ近く。安心の新幹線旅だ。「近くにいるからね〜」と手を振って、それぞれ乗車。今回は小さい人の切符も取ったから、らくらく座って朝ごはん。
新大阪で、3人席の窓側に男性が乗ってきた。バンドマンのようで、なんと、エレキを2本背負っている。1本は大型荷物スペースへ。もう1本は、「上、使ってもいいですか?」と声をかけて、荷棚へ。ひょろっとした体に、ジャージとサンダル。まだ駆け出しの空気をまとっているけれど、めちゃめちゃ人間ができていそうだった。夢に振り切って頑張っているのだろう。タッパーにごはんを詰めて持ってきていた。そこまで本気でやりたいことがあって、かっこいい。どうか、有名になってほしい。
ガイドブックの読み込み、お絵描き、漫画。なんとか4時間をやり過ごして、東京。ホームに待つ大きい人と合流し、そのまま舞浜へ。我々が降り立つ2日間、見事に快晴マークの夢の国。すでに最高が止まらない。ホテルに荷物を預けて、いざ。
12時半入園。地球儀の前で集合写真を撮り、「もうほぼ達成だね」と5人ではしゃぐ。この1枚に、この旅の全てが写し出されている。
ガッレリーディズニーで、小さい人ご所望のステラ・ルーをお迎えする。狙っていたダッフィー&フレンズのリングも2つゲットした。
まずは、腹ごしらえ。ギョウザドッグにありつくべく、ミステリアスアイランドに一直線。と思いきや、ジュビリーブルーのバルーンに、私と小さい人は手招きされる。ディズニーシー25周年の特別デザイン。高いだろうな……と若干ひるむも、大きい人に「欲しい」とお願いする2,500円。意外と持っている人が見当たらず、明らかに浮かれたグループで練り歩いた。
10分ほど並んで、ギョウザドッグを頬張る。実は初めてお目にかかるのだが、大好きな餃子がこんなビッグサイズで降臨してくれて、嬉しすぎて貪った。ひとことで言うと、肉まんと餃子の良いとこ取り。両手でがしっとつかんでもぐもぐ食べられる。ヌンチャクくらいのサイズ感を、小さい人はぺろりとたいらげた。
スプレッドシートにまとめた旅程を確認しながら、次はキャラメルポップコーンを迎えに行く。4年前に連れ帰ったリーナ・ベルのポップコーンバケツに、もりもりポップしてもらう。暑さに溶けかけた私と小さい人は、大好きなキャラメル味のおかげで全回復した。
お守りをぶら下げて、次はアラビアンコーストへ。4年前は、休止中だったのか、はなっから並ぶことをあきらめていたのか、残念ながら乗れなかったジャスミンのフライングカーペットへ向かう。待ち時間は30分。ポップコーンに全てを預け切って、暑さも余裕だ。
いよいよ、私と小さい人は前の席。大きい人とねんりん♀は後ろの席。ねんりん♂は出入り口で見守り役。ガコンッと動き出し、絨毯は空へ。「きーもちぃー!」と、小さい人は風を受けながら、ゆらめきながらはしゃいだ。初アトラクションとしては、1番ちょうどよかったかもしれない。軽すぎず、重すぎず。私はバルーンを抱えたままでも、安全に空を漂えた。
そのまま、同じエリアのキャラバンカルーセルへ。小さい人が、「おじいちゃんおばあちゃんと乗りたい」と、前々から志願していたメリーゴーラウンド。20分待って、4人横並びで乗馬。私は小さい人の後ろに立って、撮影係。上下に駆けながら、3世代がゴーラウンドしている姿は想像以上に微笑ましかった。90歳目前のねんりん♂と、80歳目前のねんりん♀。いろいろ心配事は多かったけれど、本当に来られて良かった。4人のメリーな背中と笑顔をしっかり収め、目的の9割を果たした。
さて、お次は25周年のスペシャルラッシーを迎えに行く。シーへ行ったお友だちが、「これは飲むべし」と事前に教えてくれた、マンゴー&ブルーゼリーのラッシーだ。ラッシー好きな我が家としては、飲まずには帰れない。カスバフードコートに行って、4つ買う。これが、もう一生飲みたくなるくらいの絶妙さ。マンゴーのぬったりとした甘さに、ヨーグルトの酸味が重なる。飲んだ瞬間、沼確定。ブルーゼリーは結局何味なのか最後までわからなかったけれど、ゼリー特有のみずみずしさがラッシーを軽快にしてくれている。私は小さい人と半分こ。でもこれは正直、独占権が欲しかった。年輪を重ねた人々も「おいしいおいしい」と飲み干し、歓喜の涼を取れた一行は、マーメイドラグーンのフライングフィッシュコースターへ。
待ち時間30分。軽めのジェットコースターだけれど、ねんりんずは撮影係を担当。頭上をびゅんびゅん走るフランダーに興奮しながら、3人できりんになって待ち構える。
もう少しで順番。はて、このバルーンはどうするか問題が浮上する。置き場所はあるのだろうか。ねんりんずに預けておけば良かった……と、自分のぼやぼやさを悔やんでいると、キャストのお姉さんが「抱えて乗ってくださいね」と、まぶしいスマイル。ジェットコースターでも抱えるスタイル。初の試みに若干たじろぐも、やるしかない。その葛藤を瞬時に読んだ大きい人は、「自分が持つよ」と、バルーンをひょいと抱えてくれる。ありがとうよ〜。
小さい人と私はなんと先頭になり、大きい人は後ろ。
「きゃー!って叫んでいい!?」
「いいよいいよ!ジェットコースターは叫ぶものだよ」
ちゃんとしたジェットコースターは初めての小さい人だが、どうやら絶叫系は好きそう。出発から、「どうするどうする!?くるよくるよ!?ひぃぃー!」と、盛り立てる。
カタカタカタカタ……ツッツッツッツッツッツッツッツッ……ゴゴゴゴゴゴォーーーーー
「きゃーーーーーーーー!!!!」
風を切り、遠心力で左右に揺さぶられる。両手を上げて、めいっぱい叫んだ。
「おじいちゃんおばあちゃんいる!」
「わーい!おーい!」
……..ガコンッ。
約1分の空の旅が、無事終了。バルーンも、無事帰還。
「たーのしかった〜!」
「速すぎてね、全然撮れなかったよ〜」
年輪を重ねた人々は、あまりの速さに驚いていた。どうやら、カメラより目で追う方を選んでくれたらしい。
さあさあお次は、そのままスカットルのスクーターへ。待ち時間は15分。暑さのせいだろうか。見たまんま空いており、我々としてはフッフー!上下しながらぐるんぐるん回るアトラクションだけれど、ねんりん♀は「乗るよ」と、なんなく参加。小さい人のために付き合ってくれている、というより、ちゃんと楽しんでくれている。嬉しいのと、その強靭さに驚くのとで忙しい。
あっという間に席につき、いよいよ。ジェットコースターみたいに大きな動きはないのに、笑いが止まらない。狭いところで肩身を寄せ合ってぎゅいんぎゅいん動く。ときどき、大きい人とねんりん♀が正面に現れる。なんでだろう。笑いしか出てこない。ねんりん♂は、眺めるのに最高の場所に立って、微笑んでいた。
さて。次は、4年前の小さい人が大好きだった、ワールプールへ。容赦なく回るコーヒーカップの虜になったらしい。何より、夏の本気に体力を持っていかれた我々は、室内で天国に浸る。17時。時間的にはもう夕方なのに、もうずっとどろどろに溶けている。
ひとまずアイスで生き返ろうと、シーソルト・アイスモナカを4つ頼む。想像はしていた。だけど、軽々と、生々しく超えてきた。しょっぱみが、隙間なく染み渡り、中のいちごソースで飛べた。クッキーサンドにしなくてよかったと、クッキーサンドには申し訳ないが、みんなでうなずいた。
アイスで元気になったら、胃袋もしゃあしゃあと我を出し始めて、トルティーヤサンドも召集する。中のチリビーンズとコーンチップスで、一発KO。アイスの後だからか、パンチのくらい方がえげつない。
いよいよ、ワールプールに並ぶ。もう待ち時間だって強気だ。30分並んで、4人で乗り込む。ねんりん♂は、柵の外で見守っている。
「行ってらっしゃーい」の案内と共に、結構なスピード感で縦横無尽に回る。カップも、自転。あっちにこっちにわちゃわちゃしながら、笑いも止まらず、我々のカップだけ90dBのにぎやかさ。出し切ったところで、ススーッと緩やかに止まり、よたよた降りる。
「たーのしかったー!」
4年前と同じように、ワールプールは小さい人の心をしっかり回してくれた。
夜ごはんまでの旅程をしっかりクリアして、18時半。レストランの予約は19時40分。アメリカンウォーターフロントの方を目指しながら、ゆるゆると黄昏散歩。夕焼けを浴びるコロンビア号を眺めながら、ベンチに座って語らい、小さい人は私のiPhoneで出張カメラマン。1日遊び疲れた大きい人々の蒸した表情を、バシバシ収めていく。
「おばあちゃーん」
「いや〜ひどい顔だから撮らないで〜」
思い出作りに容赦ないカメラマン。朝4時起きを完全スルーした元気っぷり。本当に、いつでも明るい。
自撮りのスタイルで5人の写真も収め、再びてくてく。
「チュロス食べたいよ〜」
小さい人と私のチュロス熱が、手持ち無沙汰でむくむく。ポップコーンは、とうになくなっている。チュロスとの会合は明日の予定だけれど、甘いものが食べたいんだよーう。すると、近くで、ミッキーチュロスのクッキー&クリーム味が待ち構えていると知り、跳ねる。
も、恐ろしい行列に一瞬で黙らされ、キャストの人に聞くと結構な待ち時間。泣く泣くあきらめる。明日こそ、チュロス三昧してやるぜ。
そのまま歩いて行くと、タワー・オブ・テラーも、何がどうなっているのかという行列で、待ち時間を見ると200分待ち。おぉ…。
結局、お土産やレストランのメニューを見ながら、しばし休息。小さい人は、ミニーちゃんの光るペンダントを首から下げて、るんるん。暗くなってきた園内で、キラキラのライトは一番星みたいに光っていた。
ようやく、レストラン櫻にて着席。迷いに迷って、年輪を重ねた人々は海鮮重。大きい人々は和牛すき焼き重。小さい人は、お子様プレートのスチームボート・セット。生ビールに、日本酒の飲み比べセット。そして、櫻でしか飲めないスペシャルドリンクも、もちろんコール。
各々はしゃぎながら、かんぱーい!また、ジュビリーブルーに出会えた。今度は、パチパチ弾けるキャンディーに楽しまされる。ヨーグルトベースだけれど、昼間のラッシーとは違って、甘さが濃い。これはまた、沁みる。私は日本酒のセットにもすっかり痺れ、幸せに浮遊した。ディズニーシーという場所が、この5人の時間が、今日1日を深い色に輝かせた。和牛すき焼き重に、途中で粉チーズをかけて食べるという新技を教えてもらい、それはそれはおいしくて、大きい人と胸いっぱいに頭を抱えた。本当に、来られてよかった。
20時15分から始まったメディテレーニアンハーバーのショーを、それぞれ心にしまい込む。そして、今日のディズニーシーを後にした。
ホテルに着くと、入り口すぐのカフェがまだ開いている。ショーケースにきっちり並んだスイーツたちが、「おかえり〜」と手を振っていた。甘いもの好きの一行は、ほぼ思考0で、食後のお供にすることを決めた。プリン、チーズケーキ、桃のタルト。
「荷物置いたら集合ね〜」と、ねんりんずルームへ再集結することが、暗黙なのに了解されてて嬉しい。今日だけじゃなくて、これまで一緒に過ごして来た時間がゆるやかに、だけどしっかり温まっているのを感じた。
ホテル好きの小さい人は、部屋に入るなり「わあー!」とひとしきり感動して、ベッドで跳ねる。楽しみにしていた、ダッフィー&フレンズのリングを2つ、開封。まさか。ダッフィーと、シェリーメイ!もちろんリーナ・ベルを狙っていたのだけれど、メイン2人がいっぺんにやって来てくれて、さすがに喜んで、恐縮した。
甘いものへの熱を再燃させて、いざ、隣の隣の部屋へ。コーヒーセットが、きっちり面を揃えて待っていた。ねんりんず、こういうひとときがめちゃめちゃ好きな人たちなのだ。まるごと堪能しながら、明日はそれぞれの旅を楽しもうと話すと、小さい人は、寂しさでカーテンに顔をうずめた。明日、我々はシー2日目を。ねんりんずは、高輪ゲートウェイ駅をぶらりして、旅を結ぶ。前から話してはあったのだけれど、いざバイバイとなると、やっぱり寂しい。
今日1日が、はなまるだった証だ。
7/9 (木) ディズニシー1日目。これまで一緒に過ごして来た時間がゆるやかに、だけどしっかり温まっているのを感じた。

