今日はついについに、来年から我が家の小さい人と6年間契約を結ぶ相棒を選びに行く。有難いことに、しょっちゅう遊びに行く芝生パークの横にランドセルのお店がオープンするということで、前々から予約をして楽しみにしていた。小学生という立派な役職を証明する重要な公式装備ではあるのだけれど、遠慮がちに申し上げても種類が多すぎて迷いの沼だ。一度入ったら抜け出せない気しかしない。そんなわけで、我が家はシンプルめな土屋鞄シリーズに的を絞ってラン活するかと意気込んでいたところ、近所にそのお店が狙ったようにオープンするというからこれは運命だとまっすぐはしゃいで心を決めた。小さい人も、色へのこだわりは強いもののデザイン性なんかは無頓着で寛容そうだったから、ある程度のカラーバリエーションがあれば十分だろうと読んだ。私自身は、あればあるだけとりあえず見てみたいタイプではあるし、いろんな相棒を背負った小さい人を、過去の小ささも一緒に抱えた気持ちでたびたび愛でたいのだけれど、現実問題として選択肢の豊富さは自由というより提出期限つきの宿題になることがある。気力を削る覚悟が私にあるか。小さい背中にのしかかる重みを全て背負う覚悟はあるか。いや、なかった。さてそういうことだから、目移りなしで我が家は行く。1ヶ月くらい前までは「うすむらさき色にする」と話していたのだけれど、ここ最近では水色に心変わりして、今日も聞いてみると「水色で気持ち変わってない」と即答する。小さい人の本名はわりと爽やか方面に振っており、大きい人々の間でも水色はめちゃめちゃイメージ通りだと話していたから、まさか全員一致で納得感100%のランドセルが選ばれるかもしれない事態に急にそわそわし出す。すると、その下心を見透かしたかのように、「でも、ピンクとかも見てみて決める」と、実際見てみたら変わるかもしれないから今のところは保留にしますと、現地判断の可能性をきっちり残してきて抜け目ない。
いよいよ予約時間になり来店すると、色鉛筆36色セットかと思うような繊細な色味がばばんっ!と飛び込んできて、それだけでテンションが上がる。お友だちのお母さんが「そこまで種類なかったよ」と話してくれていたのだが、そもそも革製品が大好物な私はこの時点ですでに不利だ。特にキャメルやブラウン系の色は大人でも余裕でいける雰囲気がぷんぷんで、ちょっと合わせてみたい気持ちに駆られたけれどそこはぐっと堪える。「いいなと思ったやつをどんどん背負って鏡で見てみな〜」と、「好き」と「似合う」の微妙な距離感について人生の先輩としてさりげなく匂わせる。まず手に取ったのは、ピンク色だ。雲のようなもくもくとしたステッチと、丸みのあるフォルムがいかにも女の子らしい。背負ってみるとピンクもかわいくて、鏡でチェックし写真でもチェックして次へ行く。次は、土屋鞄の中ではたぶん1番シンプルなデザインで、先ほどのピンクと比べると丸みもなくスレンダーな装いだ。本命の水色に「背負ってみたい」といよいよ手を伸ばし、店員さんが「このシリーズは一見シンプルなんですけど、中を開くとかわいいんですよ〜。自分で開けてみる?」と、小さい人と一緒にフタを開けてくれる。以前に、「ランドセルの開け方がわからないからめっちゃ不安〜練習しないと!」と、どこに不安がってるねんみたいな不安をぶつけてきて、しかも練習って類のことでは全然ないからおいおいと思っていたのだけれど、今日ようやくその不安も成仏し、背負った時よりフタを開けられた瞬間の方が興奮していた。さてさて中のかわいさはというと、完全に誤算レベルでかわいくて、小さい人よりも大きな「わあっ!」が飛び出し自分で自分に驚く。くすみ系の紫色と緑色のベースに、水色のちょうちょが散りばめられていて、小さい人も「ちょうちょだ!」と胸を躍らせ、店員さんの「ミナ ペルホネンとのコラボなんですよ」というひとことで、普段こういう場で一切我を出さない相方の大きい人が、「えっ!?ミナ ペルホネン!?」と急に血を騒がせる。そんなにすごいことなのか…!と相方へ解説を求めると、ちょっと本当に冷静さを失うような雰囲気で「今ミナ ペルホネンのブランドがすごい来ててさ…」と、実は目をつけていたからこんなところで出会えて高ぶってますみたいな、完全に我を忘れた早口で教えてくれる。海外の有名デザイナーの名前かと思ったが、どうやらミナ ペルホネンは日本のファッションブランドらしい。手描きのデザインがもろ好みだ。そして何より、ランドセル自体はすんっとスタイリッシュに澄ましているのに、フタを開けたら遊びが彩られときめきが飛び出してくるという幅の広さにやられた。小さい人も、いつもわくわくできる宝石箱が相棒となればさぞかし冒険が楽しくなるであろう。想像通り、小さい人とぴったりすぎるマッチングとなったから気持ち的には最高潮だったけれど、小さい人の決断に支障をきたすまいと静かに目を輝かす。きっちり写真を撮って確認し、だけどいまだに言わず語らずを貫く小さい人だったのだがピンクの時よりも明らかに納得顔を見せ、今度は同じシリーズのうす紫色を背負ってみる。最初の本命色だっただけあってこちらもしっかり似合っており、かわいいよりも、小さい人が「自分という人間の感覚を頼って選んでいること」に驚嘆し、歩んだ歳月を誇らしく思う。こちらの柄は、草木や花といった植物がふんだんにあしらわれていて、さっきの水色よりもカラーを多く使っているからか華やかな感じだ。実際に教科書を入れるとどんな背負い心地なのか、2kgの重りを入れてチャレンジしてみると、「重い〜〜!でもてぃのちゃん力持ちだから大丈夫」と、若干の痩せ我慢を含みつつ未来を見ていて頼もしい。かわいいかわいいと写真を撮り、さてそろそろ目星がついたかなと思ったら、最初のもくもくデザインの水色を試したいということで鏡の前で背負う。「てぃのちゃん、もくもくしてないまっすぐなのがいい」と、色だけでなくステッチのデザインという観点でもミナ ペルホネンがいいと言うからそうかそうかと再び背負ってみる。同じ水色でも、ミナ ペルホネンの少しくすんだブルーの方が落ち着きと馴染みがいい塩梅で、うん、本当に似合うよ。「これにする」とついに決断のひとことが飛び出し、20分ほどで6年分の時間を詰め込む四角い箱が決まった。相方の大きい人と、「この場面は絶対に我を出しちゃいけないと思って黙ってたけど、内心めちゃめちゃ推してたよね。あの水色」と、心の内を出し合って笑う。「本当に素敵なの選んだね。めちゃめちゃ似合ってるよ」とにぎやかすと、ぺろっと目元ピースをして嬉しそうだ。案内してくれた店員さんに深々と「ありがとうございます」を伝え、「や〜ほんとに決まってよかったよかった」と肩の荷が降りてお腹が空いて、帰り道みんなでパンを勢いよく頬張った。ちょっとだけ特別な味だった。
2/1 (日) 20分ほどで6年分の時間を詰め込む四角い箱が決まった。

