前日に、「明日はちょっとお寝坊しよう」と話していたから、感覚的に7時頃まで寝ようかなと思っていたのにぱたぱたと6時半に起き出す。体がどろっどろに疲れているとかじゃなければ、起きて何かしなければもったいないという気持ちに衝き動かされるタイプだからなのか、予定がなくても案外とっとと起きる。小さい人はというと、「今日は家族の仕事やりたくない気持ち」と疲れをそのまま言葉にして着替えがのろのろだ。「やらなきゃいけないことをやりたくない時はどうすればいいの?」と切実に聞くので、「むーー…やりたくない時でも、まいたけちゃんは体が動くならやるかなあ。体が動かせない時はそもそもできないけど、動くんならとりあえずできるじゃん?」と返すと、「でもやりたくないんだもん」とわかっちゃいるがわかりたくない顔でズボンを履く。休日くらい家事という名の「家族の仕事」をお休みしてもいいよなという気持ちと、とはいえ生きることに休みなどないのだからやった方がいいだろうという気持ちと朝から感情が雑多だ。ふう。さてさてどうしますかねというオーラに包まれながらも私はいつも通り朝の業に取り掛かる。ふと、キッチンの棚に鎮座するコーヒーバスケットに目をやると、もうほとんど空の状態になっている。毎日インスタントコーヒーを飲む我が家は、キッチンの取り出しやすいところにコーヒーバスケットを用意しているのだけれど、もう数個しか残っていないことに気付き、試しに小さい人に「コーヒーなくなりそうだからストックのところから出して入れてくれる?」と頼んでみる。すると思いのほか軽快に動き出し、モンカフェバラエティセブン45袋入りのボックスをガサゴソ開け始めた。5杯分が9袋の小分けになっており1つ1つ開けるのが結構難儀なのだけれど、小さい人はもくもくと作業し、バスケットに納める際には「いろいろ飲めるように虹色にして入れておくね!」と7種の味をバラバラに入れて、手前から順に取り出せばいつも違う味を楽しめる工夫まで抜かりなかった。生活を理解して冒険を仕込ませてくるあたり、手つきが完璧に生活者でビビる。特殊任務で気分が乗ったのか、いつも通り家族の仕事にも取り組み、「なんか楽しくなってきて家族の仕事いっぱいやっちゃったっ」といきいき話してくれ、動いてしまえば案外できるのが人間よな。
朝活も済ませ、落ち着いたタイミングでAmazonからアイロン台が届いたから「ほれほれ届いたよ!」と陽気に開封する。去年、5歳を迎えた小さい人に抱負を尋ねたところ、「アイロンがけやってみたい」とマッハの返答が来て、「じゃあ寒い時期になったらぜひやってみよう」と契っていたのをようやく実現できた。もともとスチームアイロンは持っていたのだけれど、洋服をハンガーにかけたたまま使えるものだからアイロン台は買っておらず、とはいえアイロンがけと言えばアイロン台だろうと、軽量かつ座ってできるタイプのものを買った。どうなろうとも構わないふきんをかけてみようということで、まずは手順を説明しながらお手本になり、さあやってみよと交代する。すると、親バカを封印して言っても初回とは思えない出来すぎた手つきで、どこからどう見ても完全に2周目の人だった。しっかり段取って、1つ1つきっちりと作業をするのが得意な性質だからか、私よりめちゃくちゃ向いてるじゃん。「上手すぎて今すぐクリーニング屋さんになれそうだよ」と絶賛すると、嬉しそうな顔をしつつも「でも、家族と一緒に暮らしたいからクリーニング屋さんにはならない」と寂しげなトーンで話す。小さい人は、さらに小さい人だった頃から「救急車になりたい」という夢を持っているのだけれど、最近そのことについて「救急車になっても家族と暮らせるかな?」と聞かれたから、「もちろん暮らせるけど、そういう人の命に関わる仕事は常に飛び出す覚悟が必要だから、一般職の人よりは家族の時間が取りづらくなるかもしれないね」という話をした。その時も、「家族と一緒に過ごしたいから救急車やめる」とあっさり言って、とにかく家族と一緒に今みたいに暮らし続けたいらしい。気付きかけてはいたけれど、我が家の小さい人は想像以上に「家族ありき」で生きている。「クリーニング屋さんは救急車とは違ってわりと普通に家族と一緒に暮らせるよ」と伝えると、「でもならない。家族のお仕事するからいい」としょぼしょぼ言うので、「家族のお仕事は残念ながらお金が入ってこないんだよー。生きるためにはお金が必要だから、社会に出てお金をいただけるお仕事に就いてちゃんと稼がないとね」と諭すと、みるみる涙が溜まって「稼ぎたくないーー」とうえんうえんする。「でも稼がないとさ、今みたいに食べたい物を食べたり、みんなでわいわい生きてはいけないんだよ」と伝えると、「やーだー1人で稼ぎたくないーーまいたけちゃんと一緒に稼ぐーー」といよいよわんわんする。稼ぐこと自体はやるつもりだけれど、1人で稼ぐのは嫌なのか。「むっくもまいたけちゃんも、いろんな人と関わりながら稼いでるし、1人じゃないから大丈夫だよ」と伝えると、ぼろぼろ涙を流しながらも少し落ち着いた。今日は小さい人の感情もさまざまだ。
さてふきんがビシッと決まったところでコンビニまで散歩して、お昼は小さい人リクエストのわかめうどんを作って食べる。午後は2人で玉入れ大会。我が家では定期的に自作玉入れ大会が催される。丸椅子にランドリーバスケットを置きやや高さを出したら、ボールプール用のボール100こセットを使って、50秒間ただ入れることだけを考えて投げまくる。これまでの最高記録は44こなので、今日は45こを目指して頑張ろうと結束したのだけれど、第7ラウンドまでやって最高記録は40こだった。前に相方の大きい人が「これほど自分と向き合う競技もない」と言っていたが、もう本当にそう思う。焦ると手元が簡単に狂い、これではまずいと切り替えるも欲が出ると数字は落ち、冷静さを保てた時だけほんの少し結果が伸びる。結局ずっと自分の調子と向き合っている。50秒の間に、こんなに大勢の感情が出揃うという家庭内競技はまず他にないだろう。「次こそ45こ行こうね」と、闘志を燃やしながらボールを片付けた。
夜ごはんを食べ終わった頃、相方の大きい人がちいかわのチョコレート缶と共に出張から帰宅。「これ今日コンビニ行った時かわいいねー!って話したやつだよ!!」と大いに盛り上がって、明日からまた本気モードで食事改善をすると決めたばかりだった私は缶だけ有り難く頂いて、チョコは2人に進呈した。
夜は仕事をしつつ、以前あれほど猛省したにもかかわらず鍵のかけ忘れをまたやってしまって、このままでは本当の本当にまずいということで、玄関に貼る「鍵かけろ!」の注意喚起ポスターを制作する。ポスカでちょっと恐怖文字っぽくレイアウト&デコレーションしたのだが、途中でインクが出づらくなって、ペン先をむんっと押したらぶちゅっと出て本当の恐怖文字になった。
1/31 (土) 50秒の間に、こんなに大勢の感情が出揃うという家庭内競技はまず他にないだろう。

