5時25分。小さい人は寝息で意思を主張してきたから、声を掛けずにそーっと抜け出す。
コンタクトをつけ、おもむろに鼻をなでると、何かの間違いでゆでたまごにでも転生したんかな?と思う手触りがあってビビる。昨日、2回目の毛穴洗浄に行って、どうやらほんとに毛穴が変わってきたらしい。初回で、「表面だけじゃなくて奥の汚れまで取るから、大体3回〜5回で肌が変わる」と聞いた。詰まりがなくなる分、普段の保湿が行き届くようになるため肌の水分量が上がり、真皮に押し上げられることで毛穴がどんどん浅く小さくなっていくと言う。つまり、これは対症療法ではなく、「詰まりにくい肌づくり」という根本治療だ。確かに、詰まりのシンボルである黒ずみはいつの間にやら姿を消し、ここ2〜3日で、ガチガチに固まっていた小鼻の角質がぴょろっと取れるようになり、いよいよ「汚れを取る」ことの偉大さが骨を揺らしてくる。そこのサロンは、数年前までは表面の汚れしか取れない機械だったけれど、肌改善を極めるためにあちこち探し回り、試行錯誤して、ようやく韓国式洗浄の相棒を見つけたのだそうだ。そんなのもう、通うしかない。初回の後、綺麗にはなったがさして大きな変化はなく、どこか半信半疑で2回目の予約を入れた私も途端に信奉者めく。なにしろ、今の体の状態でいうと、月の巡り的に絶不調のはずなのだが肌の調子はめちゃめちゃ良い。もはや、面構えまで違って見える。これは毛穴洗浄の仕業としか思えない。
5時55分、小さい人を朝に招待。テキパキ着替え、社会へ赴く準備をするも、「手提げバッグに活動着がうまく入れられないんだ」とめーめー泣くから、「大丈夫大丈夫、綺麗に入ってるよ」となだめ、朝ごはんを差し出す。小さい人は、誇張ゼロで言っても超完璧主義なところがある。私から見たら、「いや、もうビスコじゃん」と思うほどきっちりぴちぴちに入っているのだが、本人は納得がいかない。もはや完璧主義サイドが恐縮するレベル感だ。いい意味で、「あきらめること」をゆくゆくモノにしてくれたらな、と思う。最終的に、「幼稚園楽しんでくるねー!」と、平和に社会へ発った。
帰り道、職場の人とばったり。これから打ち合わせでオフィスに向かうとのことで、小さい人が憧憬するお方だから会わせたかったな。
明日は遠足でお弁当だから、華役のミニトマトを買いにスーパーへ。活きのいいブロッコリーたちにも出迎えられ、2つ買う。
帰宅して、仕事。
お昼を食べながら、小さい人が溺愛するかぼちゃコロッケの下準備。揚げ物は苦手だけれど、今年度最後の遠足ということで目をかっぴらいて向き合う。わかってはいたが、工程が重労働。かぼちゃを切って、レンジで柔らかくして、つぶす。これだけでもう私の骨は溶け出している。覚悟を決め張り切ったものの、揚げる前にこっちが干上がりそうだ。途中、キッチンにやって来た大きい人は、「わーすごい、おいしそう。てぃのちゃんのためにありがとう」と労ってくれて、どうもどうも。ただ、除菌シートのフタは立派に開けっ放しで、気が回るのはやはり一箇所らしい。
今日は、課外授業の体育クラブ修了式。普段はジャージの先生方もビシッとスーツに纏われ、式感が高まる。「1年間よく頑張りました」と、1人1人初めての賞状を授与され、「おもちゃがいい!」「お菓子がいい!」とがやがやしていた小さき者たちも、「どこにも売っていない厳かさ」に、どこか嬉しそう。小さい人の通知表には、「走ることが大好きで、各種目にいつも満面の笑みで取り組み、成功させる姿はとても立派です」と先生からのお言葉があって、静かに噛み締めた。
早足で帰り、かぼちゃコロッケをじゃんじゃん揚げる。初めて、「油切れのいいパン粉」というものに頼ったのだが、カラッとサクッと、うまくできた。大きい人にもおすそ分けすると、「まいたけちゃんのコロッケで火がついて、トンカツをUberした」と言う。思いもよらぬ方向に飛び火したな。でも、たまにはそういう、気分で軽率に動いちゃうのも楽しい。小さい人も、「おいしー!!これはお弁当に入れよう!」と鼻息を荒くする。うん、そのために作ったよ。
夕方、年輪を重ねた人々が家に寄るという。「もしかしたら、ホワイトデーじゃない?!」と沸き立ち、小さい人はそわそわ。恥ずかしがり屋な殿方の代理で、奥方が両手いっぱいに甘さを抱えて登場。本当にホワイトデーだった。しゅわしゅわプリンと、いちごと、チョコレート。可能性だけで安易に盛り上がりがちな我々にも、ちゃんと春が来た。「今日はもういいよね!」と、満場一致で甘やかし決行。食べちゃいけない時間に食べる甘味の輝きよ。
チョコレート色に包まれた小さい歯をしゃこしゃこ磨き、小さい人は冷蔵庫に「明日への希望を2粒」託し、スキップしたまま寝た。
3/12 (木) もはや完璧主義サイドが恐縮するレベル感だ。

