1/14 (水) 世界は今日も普通の顔をしてちゃっかり回っているけれど、我が家にとっては赤飯を炊くレベルの日だったと思う。

日記

「まいたけちゃん」と呼ぶ声で目が覚め見てみると、隣の布団の上で小さい人の姿がぼうっと映り「おしっこ行ってくる」と、どうやらトイレに起きたらしい。毛布の中から手を出し顔面右横の方をごそごそしてスマホを確認すると4時40分で、あと1時間か…と心の中でつぶやく。1時間くらいの前倒しだと、せっかく目が覚めたのだからもう起きてしまおうという意欲的な思考に案外突き動かされるタイプの人間だけれど、今日は違った。選べる自由と、充実するであろう今日への希望的「あと1時間か」ではなく、信じ難い眠気と、今日という1日がすでに野暮で粗末になることを確信している側の、絶望的「あと1時間か」の方だった。夜更かしは基本しないタイプで、何もなければ23時には寝てしまうのだけれど、最近は日記を書きたいし書き終わらせたいしで1時近くに寝ることが続きこのありさまなのだ。あたいは寝るぞ、あと1時間寝てやるぞ。トイレから戻ってきた小さい人と一緒に、毛布と掛け布団を深々かぶりぬくぬくしつつまどろんでいると、キッチンの方からこの時間に似つかわしくない快活な音が聞こえてきて耳を疑う。寝不足仲間の大きい人がまさか起きている。ちょっと前までは掃除機をかけるタイミングくらいまでは寝ており、「そろそろ起きて〜」と声をかけるのが図らずも日課だったのに。さすが、香を焚き出した人間は違う。寝室を開け放ったまま温もっている私と小さい人のところへ「おはよう〜」と現れるなり、「すごい昔の上司に動物園に連れてってもらった夢見た」と、「一瞬もその人のことを考えたわけじゃないのになんでだろ」とはにかみ不思議がる。「夢ってほんとよくわかんないよね」と、実は珍しく私も夢を見たので「私は米津玄師のPV撮影にその他大勢の1人として参加した夢見たよ。これこそなんでだろ」と不思議がり返すと、「えっでもめちゃめちゃいい夢じゃん。あ、別に出てきた上司に嫌な印象とか全くないし良い人なんだけどさ」と、うらやましがったり律儀にフォローしたり忙しい。すると小さい人も参入してきて、「てぃのちゃんはね、まいたけちゃんとピザを分けて食べる夢見たよ」と、私とピザパーティーが催された模様。夢というかもはや現実すぎて、やるかピザパーティー!なんだかドリーミーな朝だ。ぺちゃくちゃ話していたらあっという間に時間が経って、5時半に起きる。
さて今日は、昨日のランドセル事件について、我が家の小さい人が初めて「けじめをつける」というビッグイベントに臨む日である。悲しい気持ちにさせてごめんねとそよちゃんに謝罪し、心新たに前へ進む。昨日2人でそう決めた。「今日朝どうする?早めに出る?」と確認すると、「早めに出る。練習しなきゃだから」と意気込んでいる。小さい人を全力で応援するべくちゃきちゃき動いていつもより10分早く家を出た。空気までもピンとしている。向かいながら、「昨日さ、ランドセルの話した時さ、むらさきかわいくないって言ってごめんね」と本番さながら練習する。Take1からすらすらと、もじもじすることなく言い切った姿を見るに、たぶん心の中で何度も何度も磨いたのだろう。ああ泣けてくる。一応アドバイスとして、伝わるか伝わらないかはこちら側でどうこうできないもので、とはいえ伝わりやすい方法を取った方がいいから、「真面目な顔で」「声を張ってはっきりと」話そうと伝授する。結局Take5までやって、「それにしても、なかなか言いづらいことをちゃんと言うのはすごいよ。こういう話ってちゃんと聞いてもらえるかな、何言われるかなってこわいものだからさ。緊張してる?」と聞くと、「してない。だって面白いことでもこわいことでもないから」と、ただただやるのみだという凛とした気丈に圧倒された。着いてから3分ほどで遠くからそよちゃんとお父さんが来るのが見え、いつものおはよう合戦が終わったタイミングで予定通り「そよちゃん、てぃのちゃんが話したいことあるみたいなんだけど聞いてもらえる?」と切り出す。「うん!」とそよちゃんはお父さんに手提げを渡し聞く姿勢を整えてくれて、小さい人は車が行き交う喧騒に負けない声量で、やや距離感がバグっていたけれど思いを前面に伝えた。伝え切った。そよちゃんも「いいよ」と即答してくれて、お父さんは「こっちはたぶん何も気にしてないですよ」と気遣ってくれて、なんかもう胸がいっぱいだった。「これからも仲良くしてね」と言うと小さい人々はきゃっきゃと弾み、私はバレないように鼻をすすった。
自宅に帰り、「ちゃんと言えたよー!!頑張ってたよー!!」と相方の大きい人に伝えると、「良かった〜」とパチパチ喜んでくれる。「もうさ、祝杯あげたいくらい嬉しいよー」と、育てる者としての初めての嬉しさを滲ませると、「あげようよ祝杯」と即乗ってくれたから、お昼ごはんに浮かれマックして小さい人の成長をたっぷり祝った。世界は今日も普通の顔をしてちゃっかり回っているけれど、我が家にとっては赤飯を炊くレベルの日だったと思う。
やり切ったものだからもうぐだぐだしてしまいたい衝動に駆られたけれど、いつも通り仕事も雑事もあるからしゃんとしてこなす。小さい人も元気いっぱい帰ってきてラクラクお菓子を食べた。
夜ごはんの支度をする間、小さい人はYoutube。今日は、職業体験型テーマパークのキッザニアで、ある兄弟がピザ屋さん体験をするという動画を観ている。我が家も一度行ったことがあるのだけれど、食べ物屋さんは大人気で体験できなかったから、キッチンから「前ここ行ったよね。ピザ屋さんて本当に作って食べられるんだね〜」と話しかけると、明らかに「行ったっけ?」の顔をしているのだが、その感情を悟られないよう真剣さを目力に込めるから笑った。しばらくすると今度は救命救急の体験が始まり、始まるや否や小さい人は立ち上がり秒で熱気がすごい。実は小さい人はもっと小さいうちから「救急車になりたい」と言うほど「助けたい」意欲が激烈で、もう5歳だからさすがに救急車は「乗る」ものであって「なる」ものではないという概念的なところも理解しているはずなのだが、未だに「救急車になりたい」と熱い。「救急車じゃなくて、救急隊員ね」と教えたことはあるのだけれど、それでも小さい人は救急車なのだと覚悟が大きいからただ見守ってきた。かわいいなと笑ってずっと見ていたのだけれど、この小さい人はなんだか本当にやってくれそうでたくましい。今日はことさら輝きが激しいな。
相方の大きい人と今日も夜更かしして、キッザニアで消防士になった小さい人を思い出し寝た。

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この記事を書いた人

改善愛好家が、気付きや学びをもとに"より善く生きるコツ"を綴っています。
可笑しみのある人を目指しながら、未完成で進行中。

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