結局夜眠ったのが2時になって、さすがに気持ちの方もスリープ状態だったから派手にお寝坊して9時に目覚めた。小さい人が寝不足なんぞ微塵も感じさせない気迫でぱたぱたと起き出し、「ねえっ雪降ってる!」と言うので、今日は予報が雪だったことを思い出し「積もってる?」と聞くと「積もってはいない」とのことで、じゃあ大したことないかなとまた布団に潜る。もう起きなきゃ、頑張って起きなきゃと思いつつもうとうとが止まらず15分経ち、また小さい人がカーテンを開けて「もう時間経ったし積もったかなあ…うん、積もりそうな雰囲気が近くなってきたよー!」と、さあみんな!おいでよ!とミッキーみたいなテンションで言うので、コンタクトを装着してリビングに向かう。部屋の光の入り方でもしやと察知したのだが、「もうこんなんさ、川端康成じゃん!」というレベルの白い景色が堂々と広がっており、うっすらとしか積もってはいないが降り方に凄みが利いてて、昨日の暖冬感は絶無でわなわなした。今日はおこもりさんしてお鍋しようという予定になっており、幸い昨日材料も買い揃えていたからこの吹雪の中体を張って雄々しく立ち向かわなくていい。
さあとりあえずは朝の雑事をこなそうではないかと、歯磨きのため洗面所へ行き鏡を見てぎょっとした。左頬骨の高い位置にくっきりとした赤点が1つ、右まぶたに薄い赤点が2つできていた。動揺を隠せない。実は3ヶ月ほど前に、糖質の過剰摂取による血糖値爆上がり事件の当事者となった私は、それ以降、血は滲まないが精神をごりごりに削るような食事改善に励み、いわゆる好調期を慎ましく、しかし確実に歩んでいる最中だった。

確かに昨日は普段よりも糖質を摂った。とはいえ、お昼と夜にただ炭水化物を食べただけで人並みだ。甘いものやお菓子にまみれるような祭りも起こしていなければ太鼓すら鳴らしていない。なのになのに、当然のように居座っている赤点どもたち。放っておいても消えない赤点どもたち。平常時に振り切って整備している分、ちょっとしたことでめちゃんこ影響を受けてしまう超繊細ボディにでもなってしまったのだろうか。であれば有り難くない進化だ。何にしても納得がいかず、原因も定まり切らずでしっかりむくれる。「お鍋の時おじょうすいしようね」と小さい人と雑炊を楽しみにしていたのに、このままでは食べられないかもしれない。風向きの悪さを光のスピードで感知した相方の大きい人が、人目を忍んでChatGPTに状況を説明してくれたようで、「ちょっと来て来て」と緊急問診される。つまるところ、赤点の出た位置や、押しても消えないという状況から鑑みるに、糖質が原因ではなく外部的な要因が大きいのではないかという見立てだった。マッサージなどによる摩擦、便秘のいきみ、筋トレ、重いものを持ち上げたなどなど、瞬間的に圧がかかるような行動が昨日なかったかと聞かれたが、自信たっぷり身に覚えがない。マッサージできるほどのマメさはないし、年末にHIITで膝をちょっとやったものだから最近は生活全体の負荷が低い。赤点に関して完全に無実の感がぷんぷんだ。そんなことより、糖質が原因じゃないとして、でも現れた赤点は見た目が同じなのだけれどそれはどういうことなのかと食い下がって問うたところ、どうやら赤点には2種類あり、血管が広がったことで浮き出るものと、血管が破れ出血したことによるものとがあるらしい。今回の場合は後者、点状出血と呼ばれるものだろうとのことでほんとのほんとにわからない。わからないぞ…。とぐるぐるしていたのも束の間、「あっ!!!」と突然ハッとする。「そういえば昨日、夜寝る前にいきみました」と小さくなりながら白状すると、相方の大きい人も「それだ」と、ついに真犯人を特定した医者の顔でうなずく。そうだそうだ、いきんだというほどのいきみではなかったけれど、ぐっと腹に力を入れカッと目に凛々しさを宿し用を済ませたのだった。「あぁ…ごめん…」と、原因があまりにも原因すぎて決まり悪そうに詫びると、「これで雑炊食べられるね」と菩薩の顔で大きい人は笑った。とはいっても、ちょっとしたいきみで出血するほど血管自体が弱くなっていることは間違いないから、引き続き食事改善に励もう、そして顔ではなく腹に力を入れる方法でいきんでいこう、と、血管に敬意を払うことを誓い励まし合った。赤点は、本当に点状出血ならば1週間くらいで消えるそうだから穏やかに見守る。
寒い日の鍋と、かわいがって育てた梅酒は最高だった。雑炊は控えめに、だけどもりもり喰らった。消えぬかもしれない赤点ができたことよりも、ここまで必死に整えているのに、という努力の報われなさに私はすねてしょぼくれていたのだなと、寝る前になってちゃんと腑に落ち目を閉じた。

