今日から小さい人は、1泊2日でお泊まり保育。バスとフェリーで2時間ほどの島へ、行く。
トイレ掃除をしていると、父娘の会話。
「さーみーしーいー」
「そんなこと言われたって、行かないわけにはいかない」
武士か。かっこよすぎるんだが。でも、「玄関着いたらさ、むぎゅむぎゅしようね」と、かわいくまとめることも忘れない。
1泊2日分の荷物を詰めたリュックは、昨日の事前確認で幼稚園に置いてある。今日は水筒と、おむすび2こが入った巾着をぶら下げて出陣。3人、一緒。
8時。玄関で検温をする。東西先生が、「パパの涙拭くハンカチ持ってきた?」とにっこりする。この前の個人懇談の時に、パパも一緒に来るのだけれど、もろいから泣いてしまうかもしれないという話を先生にしたのだ。小さい人はなぜか照れて下を向き、にひひっとする。36度3分。最後の関門を突破した。
約束通り、むぎゅ。小さい人は、目と鼻を赤くし、流れそうな涙を堪えていた。それを見て、大きい人は泣く。「大丈夫よ〜。楽しんでおいで」私はむぎゅっと伝えながら、やっぱり寂しかった。2人が先に泣いてくれて、助かった。こういう別れ際、いつもなら「じゃ行ってくるねー!」とカラカラ笑う小さい人も、今日は無言で離れ、口を結び、意を決したように教室へと歩いていった。まだ小さい背中が、凛とたくましかった。
帰り道。しばらく黙っていた大きい人が、「こんなんじゃいけんね…」と、ぼろぼろ泣きながら笑う。タオルを渡した。「楽しめるといいね」青すぎる空の下、小さい人を想って歩いた。
帰って、おのおのが仕事に取り掛かる。普段より1時間も早く始動できる興奮が、じわじわときた。今日は溜まっていたエッセイを書き切る。それで、夜は本を読んで、ドラマの続きを観るのだ。
意気込みとは裏腹に、「無事出発できただろうか」「楽しんでいるかな」と、小さい人のことが気になって、各駅停車の電車みたいに、作業は途切れ途切れだった。
11時45分。きっずアプリで園からの近況報告。無事、似島 (にのしま) に着き、おむすびを食べているとのこと。小さい人、ピースがハジけている。大きい人にも共有すると、「あ…うんうん」とうなずいて、またうるうるする。感情が、バンジーすぎる。
今日は小さい人に頼まれて、たまごっちをブリードする。今はあめふらっちなのだけれど、みみっちにしたいとのこと。かめっちと仲よく結ばれて、目がつぶらな子が生まれた。
旅程に気を取られながら、食べたり書いたりして、あっという間に15時半。キッチンで洗い物をしながら、小さい人の椅子を眺める。いつもなら、この時間はあの椅子に座って、おやつを食べているのにな。園であったことをわあわあ話してくれて、家ににぎやかさが戻ってきているはずなのに。
初めて、小さい人がいない日常を過ごしてみた。確実に、自分のことが進む。少しじゃない。めちゃめちゃ遠くまで走れる。のに、動きはない。全てが止まっている。そんな感じがした。
16時半。もやし炒めと、生協で頼んだお惣菜を温めて、食べる。黄身を落とした納豆と、ヨーグルトも。結局、いつも通りの食事になった。せっかくひとりだから、パンとかお弁当を買って、特別な食事にしようと思っていたのに。ひとりで食べるのも気楽で好きだけれど、「特別なこと」には、やっぱり家族にいてほしいのかもしれない。
洗濯物を畳んで、歯磨きをして、17時半。これからまだ自分の時間があることに、わかっていたはずなのに唖然とする。最後のエッセイを書き切り、手のひらの毛の家族の面倒を見て、読書とドラマ。その間も、夕食、キャンプファイヤー、お風呂、星空観察と、気持ちは一緒に島にいた。小さい人はいないのに、いつもよりも気持ちが多忙だった1日。でもそれも、楽しかった。大きい人は、仕事が山場なのに書斎からたびたび出てきて、「楽しんでるかなあ?」「進捗ない?」「寝られたかなあ?」と、小さい人にも忙しくした。やっぱり、同じだった。
ご褒美にとっておいたという、天下一品のラーメンを食べながら言う。「明日、お迎え12時20分だよね」そわそわしながら、本日3回目の確認。 明日への待ち遠しさが、天下一品だった。
10/9 (金) 確実に、自分のことが進む。少しじゃない。めちゃめちゃ遠くまで走れる。

