「まいたけちゃん?この歯ちょっとグラグラしてる」洗面所でメイクをしていると、後ろから小さい人の声。振り向くと、顔トレ中みたいに上の前歯を出して、人差し指でちこちこ動かして見せてくる。まだ初期段階ではありそうだけれど、確かに、揺れている。「こっちも」小さい人はさっきの隣の歯にも人差し指を当て、「ほら」と、得意げに間抜けな顔をする。
ここ数ヶ月かけて、下の前歯2本がバトンリレーをするように抜け、片方はまだゴールテープを切っていない。「次は上の歯だけど、まだまだ先かなあ」「小学校に行く前には抜けるかな?」そんな会話をしたばかりだというのに、まさか2本いっぺんに。もう。しかも下2本は、グラつく前に永久歯がこんにち歯したから、正規のルートを通らずに引っこ抜いた。自分の体の一部がじわじわと、たくましさを背負って卒業に向かっていく様子を、彼女はどう見届けるのだろうか。
今日、小さい人の社会では、春に植えたさつまいもの収穫がある。「おにぎり持って、いもほりなんだ〜」と、それはそれは楽しみにしており、2このうち1こは梅のリクエストがあった。おにぎりしか持っていけないから、もう1こはおかずおにぎりにしようと、唐揚げを小さく切って詰める。
「残ったら食べたいなあ~」唐揚げかと思いきや、海苔を狙う小さい人。真っ黒おにぎりが好きだから、1こにつき1.25枚使う。余った半端海苔を進呈すると、両手で大事に挟み、くぁっしゃくぁっしゃ食べた。
新顔リップを見つけるや否や、小さい人は切り込んでくる。「なんで新しいの買ったの?え?これまだ残ってるのに」引き出しを開け、ミニオンのリップを出す。「スカスカするから新しいの買ったんだよね」「スカスカって?」小さい人は基本、納得するまで問答をやめない。また始まったか、という心の内が漏れ出て、「スカスカはスカスカよ」と答える。すると、やれやれみたいな感じで言う。「こういう時は教えるべきなのよ。大人の時期は」
大人の役目を、子どもから教わる大人。
「あ、そもそも、スカスカじゃなくてスースーか。スースーならわかる?」「スースーって、ロイテリ菌みたいな?」「そう。フリスク的なやつ」
リップの話が、フリスクで締まった。
10/23 (金) 「こういう時は教えるべきなのよ。大人の時期は」

