6/12 (金) 私は最後の運動会を、まだ終えられそうにない。

日記

5時45分。眠い目をこすりながら、「今日が本番。最後の運動会がやってまいりました」と、小さい人が気迫に乗って起きてきた。6時までは寝かせておこうと思っていたのだけれど、どうやら最高学年の風圧によって始動させられたらしい。思いが世界の気圧を変える朝。
今回の運動会は、初めての平日&室内開催。去年、スタートから心配がつきまとうくらいの天気で、結局途中で雨が降り出し、できなかった競技があった。さまざま考慮してくださっての室内。けれど、たぶん土日は空きがなかったんだろう。ライブもたびたび開かれるようなアリーナの中の体育館。競技の大会に抑えられていても不思議じゃない。仕事の都合で、お父さんが来られないお家は多いみたいだったから、部外者ながら悔しがる。だけどやっぱり、天気の機嫌を全無視で小さき者たちに集中できるのは有難い。
普段よりも15分早い出発だから、おのおのテキパキこなす。小さい人は、「まいたけちゃん、感動するよきっと」と、ナチュラルに倒置法してきて、家事の隙間をぬって揺さぶられる。まだ始まってもいないのに、ぐわっと目に清流がきて、危ない。
小さい人、水筒の支度をしながら、コント「水筒の気持ち」。
「もうーせっかく入れてもらった水飲まないでよー家ではー」「だって喉乾いたんだもん」「あーあ、減っちゃったっ」
運動会への期待と興奮が、ビシバシ伝わってくる。
3人で、タクシーで会場へ向かい、お友だちとの「頑張ろうね!」をしっかり交わし回って、大小の人々は散る。
年長組の出番は、親子競技も含めて5種目。ほぼ出ずっぱりだから、待機で巻き取ることもなく、選手と観客のまま突っ走る。とはいえ、今年は、「みんなDEうんどうかい」という名の通り、大きい者たちもみんなで参加しよう!楽しもう!というスタイル。観ているだけ、というわけにはいかない。収納と応援、両方に力を入れる。2階席、3階席でも観られるのだけれど、みんな我が子がどの位置で輝くのかまでは知らないので、分業したり、場所を移動しながらの撮影になる。
オープニングは、バルーン。
みんなで1つの円になり、カラフルな布を操ってバルーンをつくりながら踊るという、団体種目。私は同じ目線から。相方の大きい人には2階から納めてもらう。
ものの数秒で、鼻がつんとする。視界が、滲んだ。私側から小さい人は見えなかったのに、小さき者たちの積み重ねた毎日が迫ってきて、ただただかっこよかった。まだ一種目め。涙腺のペース配分よ…。
次は、剣道。
年長から新しく必修になったもので、練習期間わずか2ヶ月。週1回のペースだと、6〜7回しか実践していない。様子を聞いている限り、小さい人は毎度先生に怒られながら、だけど、いたって明るく受け止めて楽しそうだった。練習最終日には、「もうね、大丈夫!」と胸を張っていたから、今日はきっとやり遂げるだろう。
さあ、裸足に、竹刀を持った小さき者たちがサササーっと出てくる。剣道の先生も足を運んでくださっており、先生の声で全員が動く。
「礼!」「お願いします!」
正座も、手のつき方も、みんなさすがの構え。確かに、これは年長組の目玉だ。
次は、足さばき。
「まえ!」「まえ!」
「あと!」「あと!」
「まえ!」「まえ!」
「みぎ!」「みぎ!」
「ひだり!」「ひだり!」
「あと!」「あと!」
立派だった。背筋をぴっと伸ばし、重いだろう竹刀を掲げ、必死に喰らいつく。「ついてけついてけ!」と、心は大声を張っていた。
次は、三挙動という剣道の基本の素振りや打ち込みの動作。2人1組で行う。
「いち・に・さん!」「いち・に・さん!」「いち・に・さん!」
竹刀が顔にぶつからないだろうかとやや心配になったが、さすが、厳しい練習に打ち勝ってきただけはある。華麗なさばきに圧倒された。かっこいい。かっこいいよ、本当に。たった6〜7回。けれど、子どもが何かを身に付けるには十分すぎる時間らしい。
さて、プログラムはどんどん進み、なぞなぞサーキット。
これは、詳細が明かされていなくて、「成長を見てほしい」という小さき者たちの思いだけが宙を飛んでいる。準備の様子を見ると、鉄棒や平均台、跳び箱をクリアしてゴールする、障害物競争のようだ。確かに、年中から始まった体操教室での成長がめいっぱい詰め込まれている。スタートから全部納めようと、2階席から目をこらす。小さい人、最終列にいた。緊張を追いやるかのように、お姉さんぶった動きをしている。頑張れ。
さあ、いよいよ。4人が並ぶ。ピッ!笛が鳴ると、少し遅れてスタート。ビニール布をくぐり、鉄棒で前まわり。公園で見ていた様子だと、ジャンプが甘くて体が乗り切らないこともあったが、体のバネを使ってしっかり飛んだ。
平均台。足を乗せると同時によろめき、側で見守る先生もあっ!と支えようとしてくれたけれど、自力でバランスを取る。いいぞ。かっこいいぞ。
そして、跳び箱。跳び越えやすくマットが乗っている。ぐっと片足を乗せて、ジャンプ。着地でつまずきそうになるも、また、持ち堪える。ゴールの先生まで駆けて、ゴール!
頭の上に両手を振りかざし、いっぱいいっぱい拍手した。熱い思いも、大きな成長も、全部全部受け止めた。一生懸命の先に、障害はなかった。
さて、かけっこ親子対決。
親子1名ずつで走り、先に旗を取った方が勝ち。参観の時にも練習でやったのだけれど、その時は子どもチームが悔しい思いをし、運動会でリベンジ!と、勝つための作戦を考えてきたらしい。グループごとでその作戦はさまざま。お父さんお母さんは、けんけんを5回してから走るとか、腕を気をつけのまま走る、とかとか。小さい人のチームは、「じゃんけんで負けた方が、1回ジャンプしてから走る」という作戦。よくよく考えてみると、大人が勝った場合ハンデにはならないという、つまり、「負けること」を全力で達成せねばならない、超プレッシャー競技だ。
我々はトップバッター。親子で名前を呼ばれ、元気よく返事。ピッ!「最初はグー、じゃんけんぽん!」チョキで、小さい人が勝った。やった!興奮して勝敗結果にお互い体が追いつかず、小さい人はちっちゃくジャンプして、照れながら駆け出した。私も遅れてジャンプして、追いかける。結構速いな。少し追い越し、旗をつかんだかと思いきや、するりと手から抜ける。小さい人が、がしっとつかみ取った。大人が取りにくい、小さめに作られた旗だったのだ。「負けた方が勝ち」という裏プロジェクトは、大成功を収めた。親になってから、勝利条件がどんどん複雑になっていく。
プログラム最後は、親子ダンス。
4月にあった遠足の時に、一度みんなで踊ったことがある。大きな円になり、大小の人々が向かいあって、ミュージックスタート。手を繋いでゆらゆらしたり、おしりをふりふりしたり。先生方も、先生同士で盛り上がり、最後はみんなみんな笑顔でぎゅー。
私は、小さい人をむぎゅっと抱きしめ、高く高く抱っこした。年長になって、人前で抱っこすることが減ったから、小さい人は少し照れながら、お友だちに「見て見て!」と、喜んだ。
いろんな重みが腕に乗っかって、「母の欠片」が一気に寄せ集まる。親として応援に来たのに、「親にしてもらった運動会」だった。

お昼は、約束していたお寿司を食べて、夜は夏のパン祭りをして、一緒に運動会の思い出を観て締めた。
小さい人が寝た後、私は、ひとり成長の輝きをもう1周して、泣いた。たぶん、泣きたくて、観ていた。その後、30周はした。お風呂が呼んでいるのに、耳に入ってこなかった。バルーンは、全回、ちゃんと泣いた。大きい人が撮ってくれた、2階席からの小さい人センターのアングル。もう、ぼろっぼろ泣いた。こんな風に頑張ってたんだ。だけど、小さい人が写っていない方でも、やっぱり泣いた。先生たちの本気のサポートが、小さい者たちを応援する気勢がバシバシ刺さって、なんだろう、もうほんとにかっこよかった。こんなに一生懸命育ててくれて、ありがとう。それしかなかった。
22時半頃、小さい人がトイレに起きてきた。3人、布団に集まって、また、1周。
間違いなく今日通った道なのに、まっさらに、一筋に、親として胸を打たれた。私は最後の運動会を、まだ終えられそうにない。

プリーズ シェア!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

改善愛好家が、気付きや学びをもとに"より善く生きるコツ"を綴っています。
可笑しみのある人を目指しながら、未完成で進行中。

もくじ