昨夜は、各自早めに就寝。なにしろ、今日は私の誕生会なのだ。しかも、2ヶ月の食事改善強化月間を終え、甘いもの・お菓子が今日から解禁。家族と、甘くておいしいものたちに、堂々と招待されている。もちろん、堂々と参列する所存。お昼に鉄板焼きでスタートし、夜は、5月の中旬に大きい人が買っておいてくれた、「育てるブランデーケーキ」で今日の祝いを華々しく打ち上げる。大祝祭だ。
実はこのケーキ、前に空港で出会って、義理の年輪を重ねた人々に向けてお土産で買った。最長2ヶ月の育て期間を設けられるのだが、その時は一緒にすぐ食べて、それでもおいしさが衝撃だった。とにかく、染み込み方がすごい。しぼったらブランデーが滴りそうなほどじゅわじゅわで、あまりに好みすぎて本当は二切れめにいきたかった。育てずにこのレベルなのだから、育てたらどうなっちゃうんだよぅ。どうしてもお目にかかりたくて、誕生日の機会を狙い、大きい人に頼んだのだ。
今回は、説明書通り、1〜2週間ごとにひっくり返すことにした。そうすることで、ブランデーシロップがゆっくり全体へ巡り、熟成が完成するらしい。箱の中では、今ごろ何が起きているのだろう。ブランデーが順調に巡回しているのか、それとも全員で宴会でも開いているのか。でも、「作りたてよりも、時間をかけて熟成した方がおいしい」というお客様が多いというから、やらない手はない。作業は地味だが、リターンは手厚い。「あれば食べてしまう」という習性を持つ私が、よくぞここまで耐えた。1ヶ月半の育てゲーは、今日、ようやく報酬受け取りの日である。
さて、小さい人のスイミングを終え、帰り道にケーキ屋さんへ。「ショートケーキかモンブランで迷ってる」と、結局今の今まで迷い続けていた小さい人。ショーケースを何度も行ったり来たりして、最後に指差したのは、ピンクのモンブラン。いちご味。おぬし、やるな。
冷蔵庫に店番を頼み、いよいよ誕生会へ。鉄板の上でカシャンッ、カシャンッとヘラが鳴るたび、3人そろって期待まで焼かれていく。ホワイトコーンの甘いスープで胃袋を揺り起こし、魚介にも肉にも、大きい人々は悶える。小さい人はジュージューのハンバーグに、今日も盛大にほっぺを落下させた。
ワインはしっかり堪能した。それでも今日は、まだ終われない。ピニャコラーダを求めて、気軽なバーへ向かう。小さい人は、桃のジュースで乾杯。チーズの盛り合わせが、我々をさらに盛り上げる。実家でおかきをつまむみたいな気軽さで、ポテトもクラッカーも、気付けば皿から姿を消していた。
外に出ると、なんとカレーのいい匂い。胃袋は秒で跳ね、スーパーでおつまみを調達する予定だった我々は、そのまま勢いよくインド料理の門を突破した。ここの、甘め分厚めのチーズナンが最高で、「また食べたいね」と話していた店だ。まさか、誕生日の後半戦で再会するとは。年に一度の魔法には、誰も抗おうとしない。私と小さい人は、食べる手をきっちり興奮させ、服に楽しい跡を残した。おいしい日は、だいたい洗濯物まで浮かれている。
帰宅して、いよいよケーキを召喚。カステラみたいな箱から、ブランデーケーキと、日本酒ケーキをそれぞれ起こす。香りだけで酔えそうな豊潤さ。どちらも見るからにたっぷり浸かっていて、少し傾けたらそのまま初心者コースを滑り出しそうだ。うやうやしく包丁を入れると、あまりに吸いついて、包丁の方が少し照れていそうだった。
お酒は弱いが、大きい人にも洋と和どちらも届ける。「まいたけちゃんたちだけいいな〜」と、大人に混ざりたい小さい人。わかるよの顔でいちごモンブランを出すと、「よかった〜、崩れてない!」と、ぱっとご機嫌。「改めて、おめでとう〜!」と最後の祝いを受けて、おのおの至福する。思った以上のしっとり感に、くうぅぅぅとうなだれた。これが、育てた者にだけ降臨する幸福か…!年輪の人々にも食べさせたかったぞ。ブランデーも日本酒もおいしくいただき、ブランデーの方はおかわりして、幕を閉じた。
小さい人は、「まいたけちゃん、なんかプレゼントいる〜?」と聞くので、「いらないよ。もう十分すぎる…!」と、洗い物をしながら答える。ほんとにもう、お腹も胸もいっぱいだ。すると、大きい人が、書斎の方から薄くてどでかい白い箱を抱え、「これもいらないの〜?」とやって来る。なんだなんだ…!?目をぱちぱちさせると、箱のふたがふぁーっと開き、大きな大きなキャンバスがお出まし。あ…!舞台袖のムーミントロールだ…!
前に、長野の美術館へムーミン展を観に行った時、ポスターの原画としてこの絵が飾られていた。オレンジと水色という色合いにきゅんとし、静かに裏方を務めるムーミンの姿が自分と重なって、「欲しい」が燃え上がった。だけど、随分昔のものだしポスターだしで、ポストカードにすらなっていない。ネットでも駆けずり回ったけれど、見つからなくて肩を落とした。はずなのに。大きい人は、絵を描いてくれる海外の業者に話を持ち込み、オリジナルとして制作してもらったのだそう。海を渡り、嵐も越えてやって来てくれたのだ。
絵だけじゃない。あの日の私の「好き」まで、ちゃんと連れて帰ってきてくれた。ムーミンが、あの日よりずっとかわいく見えて仕方がない。
まいたけ今回食べた、育てるブランデーケーキを勝手に紹介します…!(https://www.so-royal.com/brandycake.html)

