今日も、洗濯機がうなっている。キーキー、ヒュイーーーン。大きい人に、「実はちょっと前から、ときどき音が鳴るようになったのだ」と伝える。
最近は、2人で乾燥フィルターの掃除にたびたび勤しんで、周り具合いも乾き具合いも最高になっていたのに、なぜだか悲痛に叫び出した。大きい人が調べてみると、中に異物が入っているか、モーターの劣化といったところらしい。
我が家の洗濯機は、何年か前に中古でやって来て、綺麗な状態ではあったのだけれど、随分歴史を刻んできている。中のベルトが外れて修理してもらったこともあるし、使っていて、13年という年輪の重なりを節々に感じることもあった。そろそろ、なのか。
とりあえず、洗濯機が突然壊れたら死活問題だからと、問い合わせ先に連絡してもらう。どうやら、「古い洗濯機なので、すでに部品の取り扱いがなく、修理は難しい」とのことらしい。菩薩道に片足を突っ込んでいる大きい人は、普段ほとんど怒ることがないのだけれど、「じゃ次いきましょう」みたいな、2軒目に向かうテンションで「買い替えをお願いします」と言われ、さすがに苛立ったようだ。ドラム式洗濯機といえば高額だ。そうやすやすと買える代物じゃない。「大変申し上げにくいのですが」とか、少しでも寄り添ってくれないものだろうか。さては、淡々と仕事をこなす孤高の戦士か。大きい人は、「今年はひのえうまの年で、覚悟を持ってやり切る、稼ぐと決めたから、だから次々にこういうことが起きるのかもしれない」と、壮大な視点でストレスをねじ伏せた。洗濯機もその調子でひとつ、よろしくお願いします。
さて、気を取り直して、満を持して迎え入れた湾曲の大型モニターを、大きい人の書斎へ設置する。お昼には出張へ行くというから、「土日にゆっくりやろう」と話していたのに、やっぱり早く開封したいと言う。欲が立派に幼児。買うかどうかずっと悩んでいて、やっと手に入ったものだもんな。気持ちはわかるよと、共犯を実行する。なかなかのワイドサイズなだけに、重いしとりわけ厳重だ。生卵を扱うような手つきで開封していく。すると、そこには、弓のようにしなった、もはやコックピットになるしかない様相で佇むモニターさまがいた。これは、すごい。大きい人も興奮しているようだけれど、菩薩面でなんとか隠している模様。壊しては大変だから、そーっと、そーっと、デスクに運ぶ。はい、サイズもぴったりー。やや鼻息の荒さを感じつつ、液晶を覆っている白いてろっとしたシートをはがす。すると、左上のところに、何か痕がある。「あっそこ、指紋?ついてるよ」と指差すと、「ほんとだ」と、大きい人はティッシュで拭く。けれど、取れない。もしや、初期不良…?「電源つけてみて、問題なければいいんだけど」と、背筋をややぞわっとさせて、電源をつける。「無事で、あってくれ…」と願うも、予感、見事に的中。中が割れているのか、縦にビーッと、ひびのような模様が走った。よりによって、こんな大事なタイミングで初期不良を引き当ててしまうとは。がっくしうなだれる大きい人を横目に、「すぐ連絡しようよ」と、空気を切り替える。も、ショックが大きいようで、「くっそ〜〜」と、なかなか顔が上がらない。あんなに楽しみにしてたもんね。さっきも、氷のような対応を受けて、それでも明るく切り替えたんだから、いいことあったっていいよね。
しばらくしてから梱包材を元通りにして、いずれやってくるモニター交換に備える。どうか、ちゃんと、早く、事が進みますように。
今日は、機械たちに振り回される側の人生だった。
「一気に来すぎよね」
そう言い残して、大きい人はバタバタと熊本へ旅立った。
5/14 (木) 今日は、機械たちに振り回される側の人生だった。

