6時に起床し洗面所でコンタクトをつけている私の隣に、鼻の下辺りとあご周り一帯でひげを耕作する大きい人がやって来て、鏡を見ながら「パゲが気になる…」と訴える。昔から鼻下に小さいパゲがあるようで、ちょっと前に「ひげを長めに伸ばせば隠れてわからないのではないか」と提案したのだけれど、そのパゲの上部のひげがあろうことかぐいんっ!と上向きに生えており、ちょうどご来光になってしまうのだそう。確かに、ちっちゃく丸いおハゲちゃんがいるけれど、言われなければわからないようなレベル感だと思うしそう気にするでないというスタンスで鼓舞するも、外見の悩みとは周りが計り知ることのできない繊細な世界だから、そっとし、必要以上にやーやー言うもんではないなと洗濯機を回す。すると、「まあーしゃーないか。この身をま〜かせて〜いたいぃぃ〜〜」と、ひばりさんの名曲「川の流れのように」に、受容の覚悟と自然体でありのままこそ美しいという思想をどっさり乗せこぶしを強く歌い上げたから驚き入った。さすが、大志を持って菩薩道に邁進する人間は違う。
そうこうしていると私には月の巡りがやって来て、下っ腹の痛みがしんどいから痛み止めの薬を飲んだのだけれど、最近続いている寝不足が祟ったのか内臓全体が重くて気が沈む。迷いに迷って、実は内臓がもやもやし、これはたぶん寝不足で内臓が休み切れていないという状況だと思うのだけれど、今日お好み焼きが食べられるかどうかが心配だと、大きい人と小さい人にしょぼしょぼ打ち明ける。「あ〜まいたけちゃんがよく言う内臓が下がってるって感じだね?」と、まさしくそれっす!という返しがすっ飛んできて、「そう〜〜重力に引っ張られてる時間が最近長いからだと思う」と見解を話す。「じゃあなんか優しいものにする?」と、1週間楽しみにし続けたお好み焼きをいとも簡単に手放そうとするから、私の中の私が「いやさすがに…!私はサイドメニュー的なのをもりもり食べればいいしさすがにそれは…!」とぶんぶん遠慮しつつ、でもみんなで一緒に食べられる物の方が良いのかもしれないと新しい可能性にまっすぐわずらう。ふと小さい人の方を見ると、このわずらいが意味を持たないレベルで「お好み焼き食べたいの顔」をしており吹きそうになるが、少しの間があって「お好み焼き食べたかったけど、心配だよぉぉぉ…」と気配を同じ温度にしてくれて優しい。我が家には仏心を持つできた人が2人もいて有難や。「お昼までまだ時間あるから治るかもしれないし、後でまた決めよう」と着地した。
今日は自転車の練習をするということで、初めて補助輪なしに挑戦する。正直なところ補助輪ありでも乗りこなせてはいないのだけれど、時間をかけて乗れるようになっても次のステップがちゃんとあって、そのステップもちゃんと難しくて気骨が折れるんじゃないかと思い、ここは1つ飛び越えて、補助輪なしのバランス感覚をつかみにいっちゃった方がいいかもという大きい人々の思案により決まった。もちろん、当の小さい人が「やりたくない」「自分にはまだ早いのだ」と言えば無論従うつもりでいたのだが、さすがは王者獅子座で、そう言ってくれるならやるよ〜の雰囲気でむしろ気分を良くして「頑張る」と言ったから、今日ヘルメットを新調してスタンドも付けてもらって臨む。プロテクターは残念ながら売っていないとのことだったので後日ネットで買うことにして、バッコバコに空気の抜けたタイヤも息を吹き返され、サドルもしっかり調整されて小さい人の新しい相棒となった。近くの公園まで赴き早速乗ってみる。今日の目標としては1人でサドルにまたがれて、ストライダーのように足で地面を蹴って進めればよしとしていたのだけれど、超慎重派の小さい人は「こわい…」もためらいもなく、もちろん大きい人にがっしり支えてもらってはいたけれども勇ましい漕ぎっぷりを見せたからぶったまげた。ぐらぐら危なっかしくとも教えた通り前を見据えぐんぐん漕ぐ、漕ぐ、漕ぐ。ちゃんと自転車に乗れているという事実が嬉しそうで、できるのだ自分はという自信が目から伝わってきてじんとする。結局王者は終始上機嫌で走り切り、大きい人々を驚かせた。
さて、心配された私の体調もみるみる良くなりみんなでお好み焼きへ。おのおのこ綺麗にして出立するも、相方の大きい人のショルダーバッグが出張先の空港にて間に合わせで買ったものらしく立派に冴えない。大きい人が言うには、大きめなサイズ感があれこれ詰めるのにちょうどいいらしく、端っこがちょっと裂けたにもかかわらずクリップで止めて使っているところを見るとお気に入りなようで申し訳ない。とはいえ、エコバッグ仕様な質感が服装とのバランスを崩していてどこか訳あり感がすごいから、「誕生日は大きめのショルダーバッグだね」とやや角をとって伝える。「いやあ、じゃあ今度一緒に選びに行こう」となぜか照れて、そういえば小さい人はどこ行ったよと振り向くと、マンション入り口のライオンの像をなでていた。お昼時で混んでいるだろうからと覚悟して向かったけれど、コンビニに立ち寄るような軽さですっと入れて予想より1時間早くお好み焼きにありつけた。せっかくだからとウィンドウショッピングして、大きい人々はカフェラテを、小さい人はりんごジュースを片手に散歩がてらスーパーに向かう。途中、飲み切ったカフェラテのカップをコンビニに捨てたいが氷が残っているからどうしようという話になり、信号待ちの間「それなら氷を食べてしまおう」と、小さい人と相方の大きい人が氷に挑む。がばっと氷が口に入るのがこわくて恐る恐る傾けたものの結局がばっと落ちてきて、小さい人はしっかりビビっていた。「これ食べられる量じゃないね」と意見がまとまって、結局側溝にがしゃっと流させてもらい、カップはコンビニで捨てさせてもらってガムを買って帰った。
スーパーでは、お昼のお好み焼きとバランスを取るように海鮮丼を放り込み、しかしちょっとあっさりしすぎかと揚げ物も放り込み「なんか楽しい感じになったね」とカゴを指差して盛り上がった。「酢飯と揚げ物の組み合わせ最強じゃん」と食べ終わった後に活況して、そういえばお寿司やさんてそういうつくりになっているなと、図らずも自宅がお寿司やさんになったことが誇らしい。
大小そろった人々の1日は、こうして満足に閉店した。
1/17 (土) でもみんなで一緒に食べられる物の方が良いのかもしれないと新しい可能性にまっすぐわずらう。

