思春期から30代まで、いや30代に入ってからもしばらくは年中無休レベルで肌荒れ子ちゃんだった。程度はさまざまだが毎日どこかしらにニキビが出るというのが私の日常で、おっ今日は落ち着いてるぞという日は1年のうちで5日くらいしかなかったからデートの時なんかはうじうじ悩んだし、いろんなスキンケアを試しまくってきた。
美容にうとかった私も20代半ばでようやく保湿の重要性に気付き、安価なものでもじゃぶじゃぶと使いびたびたにしてしまえば案外上手くいくと要領を得、保湿ひとすじの時期を過ごしたのだけれど肌改善はなかなかの難航っぷりだった。もともと皮脂が多く分泌されるオイリー肌かつ強めの敏感肌タイプだったから合うものを見つけるのがまず難しく、好転反応的にニキビが出たのか合っていないから出たのかの判断もつきづらかった。良い方向に進んでいるのかが読めず、結果的にお金をドブに捨てたようなもんだな的状況も度々でしおしおすることも多かったのだが、今思えばそこに輪をかけて大食い魂が炸裂し肉まみれで人生を歩んできてしまったのだから当然の結果である。
世の中がツヤ肌だすっぴん美肌だと盛り上がりすっかり定着しても、私の肌はファンデを着込みマット肌代表として時代の逆を走り続けたのだが、30代に入り環境の変化や過剰なストレスという強烈パンチを喰らい思春期を超えるニキビに悩まされた。メイクはより綺麗に見せるためのものではなく、マイナスを限りなくゼロに近付けてまあまあ見れる状態にするものというのが私の常識だったがいよいよ隠すこともままならなくなった。
なす術もなくしょぼしょぼ過ごす私を見兼ねた家族が評判の良い皮膚科を勧めてくれ、当時あまり家を空けられる状況ではなかったのだけれど月に1回しっかり通い半年経つ頃にはぴかぴかの肌になってひっくり返りそうだった。NOニキビなだけでなく毛穴の黒ずみまでなくなったから肌がとんでも白くなり、専門家の腕のすごさに感心しきった。
結局1年ほど通い肌が安定したのを機に通院をやめたが、その皮膚科の強みが治してかつできにくくするという予防重視のところだったからかそれ以来ニキビに苦悩することもなくなった。
そうして人生で初めて肌に多少の自信が持てるようになりすっぴんライフの可能性がめきめき高まってきて、ようやく私もツヤ肌の波に乗れるぞと思っていた矢先に次の壁が立ちはだかりぐおぉぉとなる。現れたのは肝斑だ。30代となればいろんな悩みも出てくるだろうと思ってはいたもののまさか肝斑で悩むとは、人生とはわからないものである。それまでしみそばかすとも無縁で生きてきた私だが、頬骨の高い位置にもやぁ〜っと茶色い影が出始めた。調べてみると肝斑もしみの一種で、どうやらしみよりも治りにくいとされるものだと知りよりによってとへなへなする。原因はなんぞやとまた調べてみると主に女性ホルモンの乱れ、ストレス、紫外線とあり、心当たりがありすぎてうなだれた。女性ホルモンなど20年くらいは乱れっぱなしだったし、肌荒れが加速するストレスも経験しニキビと真っ向闘ってきた。焼けるのを阻止したくて子どもの頃から紫外線対策には精を出していたからこれは可能性として低いとすると、やはり内側の原因が大きいであろう。
右の頬はほとんどわからないくらいだが左の頬は濃く、コンシーラーでもなかなか隠れてくれない程度にまでなってきたからいよいよ美容皮膚科に通うことにした。今の肌状態を特殊なカメラで撮影しこれは肝斑ですねと先生からお墨付きをいただいたので、しみや肝斑、ニキビ跡に効くとされるニードル治療をベースに、左頬のところだけピンポイントでレーザー治療をしましょうということになった。
施術後の真っ赤な顔を画像で見たことがあり、あまりの痛々しさにニードルは避ける人生を送ろうと決めていたのだがあっさりと刺すことが決まった。ただそこの美容皮膚科はダウンタイムが短い機械を使うのが売りで赤みも当日には引く可能性が高いし、麻酔クリームもしっかりするから痛みもだいぶ軽めだと聞きそれならばと心を決める。諸々スタッフさんの説明を真剣に聞き、ニードルは大体5〜6回受けるのがおすすめだが様子見で最初はトライアルにして、効き具合いを見ながら単発なのかコースなのか決める流れで進めてもらうことにした。
ちなみに麻酔は2種類あって弱めなのと強めなのがあり2,000円違いますがどうしますかと聞かれ、「強めのにしてください」とふがふが前のめりだったからか、施術してくれる看護師さんに「あっ痛み結構苦手です?しっかり塗りますからね〜」と言われ少し恥ずかしくなる。スタッフさんから共有される患者記録に【痛みの耐性 1】みたいな項目があったのだろうかと、「痛みにはわりと強い方なんですけど、皮膚科のレーザーとかの痛みは苦手で…」と言い訳みたいな発言をして「いやこの麻酔はニードルのやつだがな」と内心突っ込みまた自分を恥じた。強い自分でいたい気持ちがどうも前のめりだな。
そうして強めの麻酔クリームを塗ってもらい20分置くと肌表面が分厚くなったような感覚があり、洗い流すのに触ってもぼんやりとしていたから安心した。「トライアルなので弱めに打ちますがフェイスラインは少し痛いかもしれません」と始めてもらったのだが、麻酔の効きがすごいのかサクッサクッと刺されているのはわかるものの痛みはほぼなくなんだなんだいけるぞと晴れやかになる。最後は目の周りで、皮膚の薄いまぶたも躊躇なく刺し目の枠きわきわまで攻めるものだから「そんなところまで打てるんですね」と驚きを伝えると、「そうなんですよ〜打つ針の長さを自由に変えられるので」と機械の仕組みにも触れてくださり理解が進んでまた安心した。
ニードルが終わると何やら顔に冷たいものを塗り、パックしてミニローラーでぴたぴたにしてその上からまたどっしりと重いクリームを塗り、「これを握ってください」と細い鉄の棒らしきものを握らされ、微弱な電流を流して15分置くと説明を受ける。貴金属NGな理由の答え合わせを終え真っ暗な中静かに時が過ぎるのを待つ。これがイオン導入というものらしく、穴が開いた肌に美容成分を浸透させるためのものだそうで、確かに肌の中へ良いものがぎゅいんぎゅいん流れ込んでゆく感がすごい。導入し終えると、「赤みほとんど残ってないですね」とにっこりされたので私もにっこりして、別室で院長にバトンタッチとなり、目立つ肝斑のレーザーをものの10秒くらいで打ってもらい初回が完了した。
家に帰り家族に「全然痛くなかった!麻酔すごいすごい!」と麻酔のすごさを話し、とりあえず頑張った頑張ったと喜び合った。
それから約2ヶ月、言われた通り塗り薬でもアプローチを続けたのだが左頬の肝斑はびくともせず、たった1回で結果を求めてはなるまいと思いつつもやもやとした気持ちで2回目のニードルとレーザー治療へ行く。またあの特殊なカメラで撮影すると、やはり肝斑は変わっておらず先生も難しい顔をされたが、前回の写真と比べると肌全体のツヤ感がまるで違うとフォローしてくださりるんるんする。洗顔してカピカピの顔にも関わらず確かに表面がつるんと輝いているのだ。これはもうニードルのおかげと言えよう。
さて今回もと、前回と同じ看護師さんがニードルの施術を担当してくださったのだが「2回目以降はちょっとパワーが強くなりますよ〜頑張りましょう〜」と励ましてくれ、あの麻酔なら全然大丈夫です!と内心陽気に答える。あのしぶとい肝斑を黙らせるような効果があればいいなと期待に胸を膨らませて挑んだ私は、開始早々絶望した。始まってすぐもう痛かった。うっと歯を食いしばらねばちょっと無理という痛みが走り、マイクロニードルとは言え針の1本1本が感じられるほどガツンときて、目の周りはもう自然と涙が流れた。この治療を弱めの麻酔で挑む人がいるのかととても信じられなかったが、痛みに強い人はいけるのだろうか。何にしても、トライアルは打つパワーが弱かったから痛くなかったんだと静かに悟った。
2回目のニードルとレーザーが終わり外に出ると、肌の感覚が何やら1回目と全然違ってぎょっとする。顔全体が穴にでもなったかのように通気性が良く、風が皮膚を抜けて後頭部からびゅんびゅん去っていくようだし、水を飲めば顔から漏れ出てきそうな雰囲気もあって初めてのことにおろおろした。その頃は冬だったから冷たい風が特別染み、たぶんサーモグラフィーで見たら顔だけ真っ青だったと思う。冬の朝、起き抜けに窓を開けてこの状態だったら結構ぶったまげるレベルではなかろうか。剥かれるつもりのなかった栗が剥かれるとこんな感じだろうなと思った。何であれここでもトライアルという名の優しさに浸り、ここまで効いた感じがするのだからきっと変化があるだろうと信じることに決めた。
そしてまた約2ヶ月、とうとうあの肝斑に変化が現れ始め薄くなり出した。嬉しくなってニードルの3回コースを契約し、レーザーに関しては先生と相談しながら単発で進めていくことになった。この頃、食事改善にも勢いがつき、月のものが安定してきたことも要因なのだろう。内側が整い出したから外側にも影響が出たというのが私の了見であるが、何にせよ口から摂る物の影響力には敵わないなと思う。
私は日常的にサプリを服用しているのだが、昔、薬じゃないし大丈夫だろうと酸化マグネシウムとカルシウムが配合されたサプリを多めに飲んで痛い目にあったことがある。30分後、右足首がむくむくと膨らみ、なんかおかしい!なんかおかしい!と言っている間にぱんぱんになった。全くしならずまるでゾウ足のようになり、もちろん痛くてひーひー泣いた。当時お通じを助けてくれるマグネシウムの力にお熱状態だったから、出したさ理由にいっぱい飲んでしまったのだ。1時間ほどで腫れも引いて事なきを得たが、そんなスピード感でサプリは体に浸透し表に現れるということを知って恐れおののき、量を守ってねと口酸っぱく言ってくれていた家族に量を守ることを誓う。
食べ物というのはプラスの結果でもマイナスの結果でもわりと早い段階で変化が何かしら起こる。私の場合、合わないものを食べればたちまちニキビが出るし、合うものだけで過ごせば3日で肌やら髪やらお腹の調子が良くなってうきうきになる。
結局は食事。食べ物が体をつくっているというのは本当の本当で、そのベースなしで他のどんなことに真剣になっても効果は発揮しきらないように思う。ある程度まではのぼれるが、そこから先はやっぱり食事なのだ。逆に食事さえ整っていればあとの努力はぐんぐん勢いづいて輝き出し、それこそ相乗効果の極みというものではなかろうか。
なるほど自分の標準を上げるのは整った食事なのだな。内側の改善こそストレートに外側に出るのだからこれはやらない手はない。

そう言いつつもスーパーで、買わないぞと決めて飛び出したのにお菓子コーナーにあっさり参上してしまう私の甘さよ。まったく世の中は魅力的なもので溢れすぎている。さて残り2回のニードルも頑張ろう。
