昨日、放課後の園庭で、めじるしアクセサリーが話題になった。渦中の、サンリオとちいかわ。
ガチャの最新情報に、秒速で反応できるお母さんがいて、「この辺りの峠は攻め切っている」という話を聞いたら回したくてうずうずしてきた。人間の初期装備が完全に起動。「見ない」「聞かない」「調べない」のうち、どれか1つでも欠けると沼住民確定の旗が堂々と上がる。なにしろ、サンリオもちいかわも大好きなのだよ。
今日は11時半から小さい人のスイミングがあるから、その前に近所のガチャ王国へ行く。10時着を目指して出立した。道中、「もう開いてるんだよね?」という大きい人からの確認にぞわっとして、開店時刻を調べる。11時。始まってもいないのに、終わった。11時じゃ、スイミングに間に合わない。…と、崖の上に立たされたかと思いきや。なんと、今まさに通り過ぎようとしていた、もう1つのガチャ王国に列ができている。事情は知らない。だが、「これは並ばなきゃ」という、突き抜ける衝動だけはわかった。まるで狙ってちゃんと来た人みたいな顔で、スッと列に溶け込む。
しばらくすると店員さんが、「サンリオは回数守っていただければみなさん回せますので!ご協力お願いします!」と声を張る。もしやとは思ったが、サンリオだと…?あの…?Xで再入荷情報をキャッチしたわけでもないのに、この流れ。今日は宇宙と、かなり明るく交信している。小さい人も、「え!?サンリオ!?マイメロがいい!」と、急に落ち着きを失ってバタバタ。お一人様3回まで。3人で来ているから、理論上は9回いける。でも、「そんなにいっぱいはいらないか」と、3回に決める。捕獲欲が満たされれば、たぶん、それでいいのだ。たぶん。
列が進むにつれ、どうやら4台入荷していることが判明。これはもう、間違いなく分配される。鮮やかな未来が透けて見えて、鼻息が荒い。もう少し、あと10組くらいのところまできておもむろにXを開くと、ここから歩いて5分ほどのシープラに、「ちいかわのめじるし」が再入荷したとの情報が飛び込んでくる。投稿時刻を見ると、19分前。前回は、確か1時間で完売していた。なら、たぶん、まだいける。ここを少しでも早く抜けるため、「2台に分かれて回そう」と、大きい人に300円を託す。完全に、時間との戦いに入っている。
とうとう、順番が巡ってきて、端と端の機械に散る。出てきたカプセルは、色を見る限り、マイメロ2つとクロミ1つ。うん、十分。かなりいい。あれからさらに伸びた行列をお尻の方まで見届けて、ダッシュ。いけるか!?いけるよね!?
肩を上下させて辿り着いた先にあったのは、しん、と凪いだシープラだった。
…あ。ほぼ、ほぼ負けは悟った。だけど、まだわからない。まだ、自分の目で見ていない。端から丁寧に、目を凝らして1周する。人間、絶望にも納得感を求めてしまう。
ため息とともに、心の目を薄目にしてXを開く。6分前。完売。0.1%の希望は、活字によって今、完全に絶たれた。あれだけ歩き回ったのに、最後に息の根を止めたのは、文字だった。
気持ちを新たに、ドトールでミラノサンドとヨーグルンを買って、移動式朝ごはん。スイミングへの道中、楽しそうに歩く2人の背中を眺めながら、胸の奥で渦巻いていた後ろめたさを、白状する。
実は、ちいかわのめじるしはどうしても欲しかった。しかも珍しくコンプリート欲が暴れていた。だからもう、メルカリで買ってしまっていたのだ、と。だけど、ガチャ好きの人たちからしたら、たぶん、それはご法度。自分の足で回って、ちゃんと回して、ようやく手に入る。あの世界は、そういう、努力の軌跡込みで成立している。だから、「持っていること」より、「回したという事実」の方が欲しかったのだ、と。
すると大きい人は、「だからまいたけちゃん、ちいかわのがないってわかっても落ち着いてたんだね」と、妙に納得の顔をする。出ていたか。裏口を使ってしまった人間の、微妙な余裕が。
物は、もう手に入っている。でも、「回した」という痕跡だけは、どうしても残らなかった。禁断の果実に手を出して残るのは、甘さではない。「ルールを破った自分」だけだ。
家に飾って、そっと楽しむことに決めた。2人も、「そうしよ!」と乗ってくれる。なんと優しい世界。
さて、小さい人、今日は2ヶ月に1回の進級テスト。入ってまだ間もないけれど、緊張の中楽しくやり切って、「9級の緑色かめさん」から「8級の緑色たこさん」へ飛んだ。1つの級の中で、緑・赤・青と3段階になっており、今日の目標は「9級の赤色かめさん」だった。でも、2つスキップして、たこさん。「なんと、てぃのちゃん、かめさんからたこさんになりました」と、驚き照れた表情に、胸の張り方が合っていなくてかわいい。人生初めての「テスト」に、味をしめた顔をしていた。
さてさて、とうとう、新しい洗濯機がやって来た。ここのところ、ずっと「キー」だの「キュイーン」だの暴れていて、問い合わせたら「買う一択ですね」のレアカードを切られ、買った。マットホワイトの、3kg容量が増したドラム型洗濯機。午前中に電話をくれる段取りだったが結局鳴らず、水しぶきを横目に「大丈夫か!?ちょっと危ない業者か!?」とそわそわしていたけれど、めちゃくちゃ感じのいいお兄さんが2人来た。しかも、現役の方を引き取ってもらえないかもしれない可能性があったのに、どういうわけか引き取ってくれて、2人で折り紙みたいに身を畳みながらお礼を言った。新しい方を運び込む前に掃除している最中は、おしゃべりな小さい人のシッターもしてくれて、もう、何に対してどこまでお礼を言えばいいのかわからない。「ありがとうございましたー!ありがとねぇー!」と、大小それぞれに笑顔を蒔いて、爽やかに帰って行った。
ガチャでは、欲望と罪悪感であんなにふがふがしていたのに、今日1番心を持っていかれたのは、洗濯機を運ぶ男たちの手際と真心だった。
5/23 (土) 人間、絶望にも納得感を求めてしまう。

