原田マハ先生の小説、「本日は、お日柄もよく」をご紹介します。
小説のクライマックスに号泣するという経験はありますが、泣き通したのは初めてです。
シンプルに、ただ、私も頑張ろうと思えた。
お守りにしたくなるような、心が洗われる小説です。
「本日は、お日柄もよく」あらすじ
27歳のOL、二ノ宮こと葉は、子どもの頃から密かに想いを寄せていた今川厚志の結婚式に出席した。そこで、涙を流してしまうほどの感動的なスピーチに魅せられる。
伝説のスピーチライター久遠久美に弟子入りしたこと葉は、「言葉が持つ可能性」にのめり込み、ついには政界を舞台にスピーチライターとして大役を果たすことになる。
仕事、社会、結婚、家族、人生。
あらゆるテーマについて考えさせられる、涙必至&勇気をもらえる小説です。
「本日は、お日柄もよく」おすすめポイント
始めから終わりまで、スピーチに心を揺さぶられまくる
結婚式の祝辞に始まり、社内プレゼン、党首討論、街頭演説と、さまざまなスピーチが出てきますが、ここまで泣かせますかねというくらい揺さぶられます。
本の裏表紙に「目頭が熱くなるお仕事小説」とあるのですが、だいぶ謙虚な表現です。ティッシュでささっと拭けるような、そんな生易しい相手じゃありません…!感受性の豊かな人だったら、読み終えるまでずっと泣き腫らした顔になってしまうんじゃないでしょうか…
スピーチに出てくるエピソードの感動度合いも然ることながら、スピーチ自体の考え抜かれた構成に心を鷲掴みにされます。
1人、また1人と、胸を打たれて目が離せなくなっていく様子が目に浮かび、自分もしっかりその1人になっている。読んでいるだけなのに、スピーチ会場の一体感を肌で存分に感じることができる。

ここまでの体験型小説、初めてでした。
自分の人生を切り拓いていった、こと葉の成長ぶり
「現状維持」を言い放つOLだったこと葉ですが、久遠久美との出会いをきっかけにどんどん行動を起こし、殻を破っていきます。
知らない世界に飛び込む怖さは、多かれ少なかれ誰もが持つものですが、心の矢印が向く方へまっすぐに進み、日々努力する姿に勇気をもらえました。

たくましく、そしていきいきと変わっていくこと葉に、豊かな人生の歩み方を教わった気がします。
こと葉に影響力を与える、個性豊かな人間たち
久遠久美をはじめ、こと葉や厚志の家族、友人、仕事仲間…それぞれがユニークで、違う色を持っているように思えるんですが、そこには「良く生きようとしている」という共通点があると感じます。
スピーチライターとしてこと葉が大きくなっていくのは、久遠久美からスピーチライターとしての大基本を学びながら、周囲からも多くのヒントと学びをもらっているからだなと。

さらっと飛び出す名言たちは、書き留めておきたくなるものばかりでした。
「本日は、お日柄もよく」私が学んだこと
映画、音楽、本、手紙、絵…人の心を動かすものっていろいろありますよね。
だけどその身一つで、心を込めたスピーチによって、動かしてしまう。
言葉そのものが持つ力はもちろんですが、それを「話すこと」の威力に度肝を抜かれました。
ストーリーの中で、スピーチはオーケストラに例えられていますが、「入りは静かに、クライマックスは感動的に」と、本当に1曲弾き切る感じ。声のトーン、大きさ、間、目線。使える全てで表現する。そして聴衆は、熱のある舞台演奏に、スタンディングオベーションしてしまう。
それがたった1人のスピーチによって作られるなんて、スピーカーという表現者の素晴らしさを感じずにはいられませんでした。
と同時に、私は、どう伝えるかも大切だけれど、「何を伝えるのか」が1番大切なんだと学びました。
結局、伝えることの軸がしっかりしているから、言葉は力を持つ。
スピーカーが心からまっすぐに伝えられるのは、その想いを潔く1つに絞る、スピーチライターの役割あってこそだと思いました。
伝えるために言葉はある。
改めて原点に立ち返らせてくれたこの作品に感謝しています。

思いっきり泣きたいあなたはぜひ。